2003年に設立。「子どもからお年寄りまでのたまり場を作りたい」という叔母の思いからスタート。小さな民家を改修して、認知症のおばあちゃん2人を預かったところから、現在は16の事業所を経営するまでに。
永田かおり理事長に「社会福祉法人 ひだまり」設立のきっかけや介護現場で働く職員さんたちの様子など伺います。
《永田かおり理事長へのインタビュー》
「看護師から福祉の世界へ」

記者:「『ひだまり』を立ち上げたきっかけは何だったんですか?」
永田理事長:「当時55歳の叔母が『高齢者が笑顔で過ごせるたまり場』を作ろうと思い立ち、当時29歳で看護師をしていた私に手伝って欲しいと声を掛けてきたことが福祉への道の始まりでした。ちょうど2人目の子どもの出産直前で病院を休職するタイミングだったので、看護師としてできること、小さな子供を連れてできることを手伝おうと思いました。」
記者:「そこから実際の立ち上げまでは、どのように進んでいったのですか?」
永田理事長:「1年半ほど叔母と一緒に勉強をして、平成15年にNPOを立ち上げました。介護は『町づくり』に発展することがわかったんです。若い人、学生、多世代が関わることで、本当の意味で『たまり場』になると思いました。当時は『障害者も高齢者もどっちも診ていく』という富山型の介護が有名になってきていて、滋賀でも集落単位の小さな規模で『地域で介護をする』そんな施設を増やしてしていこうという流れの中に、私たちの活動がマッチしました。」
永田理事長:「空き家を見つけて、デイサービスの準備を進めていた頃に、突然叔母が脳出血で倒れてしまいました。私は行政に『このままデイサービスの事業を始めることはできません』と言いに行きましたが、『立ち上げ直前のここまで準備しているからあなたがやりなさい』と言われて今に至ります。」
職場の雰囲気やスタッフ間のコミュニケーションについて

記者:社内のスタッフ間や法人内での雰囲気で意識していることはありますか?
永田理事長:「職員3,4人のところから立ち上げ、現在は、職員130人くらいになりました。事業所が増えたこともあり、事業所単位でしっかりコミュニケーションを取っていくことにしています。各管理者は人柄、協調性を重視しています。自分のできないところが分かっていて助けてもらうことができる人。知識、技術が一番優れた人を選んでいるわけではないんです。全部できる人が管理者になると、全部自分でやってしまったり、できない人の気持ちがわからないので相手を責めてしまいますから。」
永田理事長:「現場は多世代・多職種が混ざり『誰が新人で、誰が看護師か』などが一見すると判らない状態でチームワークがとれています。『現場の柔らかい雰囲気』と『組織としての管理者と職員というルール(土台)』それが両立する状態が私の理想です。うちの法人は『柔らかい雰囲気』が先行しているので、『しっかりとした土台』との区分けできる職員を増やすことが今後の課題だと思っています。」
入職後の流れについて「年齢や経験などに関わらず活躍できる現場」

永田理事長:「介護の現場は人手不足なので、即戦力ですぐに現場を助けて欲しいのが本音ですが、職員が入職の時に1ヶ月くらいいろんな事業所を周ります。事業所の雰囲気やカラーを感じ取り、視野を広げたり、協調性を高めるため。そうすることで受け入れ側の職員との協力体制が取りやすくなります。」
記者:若いからといって上下関係にあるというわけではないんですね。
永田理事長:「そうですね、組織の序列はありますが。管理者になるために経験年数は関係ありません。一番早くに管理職になった人は他産業から40歳で入社。2年目で管理補佐、3年目で管理者に。初任者研修しか受けていません。無資格で入ってきたので、今も管理者2年目ですが、介護福祉士ではないです。」
永田理事長:「今一番若い人では、高校新卒の19歳。3ヶ月掛けて事業所を周り、面談を重ねて、7月から配属先が決まりました。一番上は73歳で障害児介護をしています。他にも生涯現役を地でいく方がいて、それぞれの役割を持ってくれています。例えば、『職員の子供が発熱した際は代わりに入ってあげよう』など、『自分の持てる力をどうやって社会に出せるか』を考えてくださっています。多世代がいろんな発案をしていて管理者がまとめて一緒に作り上げているんです。」
「いろんな産業と繋がり共に生きていく」未来を作る

記者:地域に対して、描く未来像は?
永田理事長:「ここは介護や福祉がメインになっていますが、そこを基盤にしながら最終的にはいろんな産業と繋がりあって、これからの少子高齢化・過疎地になっていく地域で『どうやって皆さんと共に生きていくのか』が大きな課題だと思っています。『介護は大事』、『終の住処もいる』、一方でそういった基盤をしっかりと作りつつ、『職員が飛び出して町を駆け巡る』看護職や介護職をたくさん作りたいと思っています。例えば、『えきまちテラス長浜』や『市役所』に行って、相談会を設けるなど。中で何かを待っているのではなくて、『私たちが行く』スタンスを目指しています。介護だけでなく、支えるのは『暮らし』。必要なことを支えます。買い物が不便であれば買い物を支える。病院行くのが不便であればどうやって病院に行くかを支えるなど。」
就活生へ「介護はキャリアを描ける職業」現場では最新技術も導入

記者:「最後に、就活生にメッセージをお願いします。」
永田理事長:「いつも子どもさんたちの将来なりたい職業に看護師や医者は入っているけど、『介護』は入っていません。介護は看護師に続く人の体や人生を支える素晴らしい仕事だと思います。あとは今後介護は基幹産業になるので、キャリアを描ける職種の一つに必ずなっていくと思います。昔のように人の手だけで介護をするのではなく、ICTやAIを使った産業になるので、イメージを払拭して気軽に見学に来ていただければ」
自分の町にあるとうれしい「ひだまり」が運営する介護施設

自分の家族や自分もいつかはお世話になるかもしれない介護施設。
それがこんなに温かな思いを持って運営されている場所だったら、アットホームな場所だったら、どんなに安心か。
永田代表の「介護は看護師に続く人の体や人生を支える素晴らしい仕事」という言葉が印象的でした。
今後の少子高齢化社会でますます必要とされる業界を「ひだまり」は明るく照らしパワフルに先導していくことでしょう。