たとえばスマートフォン、ノートパソコン、エアコン、自動車ーーの内部。ワボウ電子株式会社は、私たちの社会を支える電子機器に内蔵される電子部品が搭載された板「プリント実装基板」の製造や、電子機器・電子部品の組み立て事業に取り組むモノづくり企業です。

1941年の創業時は紡績会社だった同社は、時代の変化に合わせて半導体製造、電子部品製造事業そして電子機器の組立と転換し、発展してきました。現在は長浜市内の3工場に加え、中国・蘇州にも大規模工場があり、働くスタッフは全拠点合計で1000人を超えます。
常に新たな分野への挑戦を続ける同社。「10年後、20年後にどんな事業を手がけているかわからない」といいます。そんなチャレンジを支える人材を求め、新卒採用に取り組む総務課長の岡田英幸さんにお話を聞きました。
70年代、浅井工場ではスーパーコンピュータを作っていた

記者:主力事業をどんどん転換してきたとのことですが、創業時は紡績会社だったのですよね。
岡田総務課長:創業は1941年で、当初は紡績会社でした。日本全体が繊維から電子機器、機械工業の時代に変わってきた1966年に、半導体や電子部品組み立ての事業をスタートしています。
紡績は細かい作業が多いため、女性の作業者さんが多い会社でした。その細かな手作業に注目した大手メーカーから「半導体を作りませんか」と誘われたらしいです。その頃にいただいたお仕事は、2000年代まで続いていましたね。
1979年に現在の主力商品、プリント基板の実装やそれを使った電子機器の製造を始めました。最初は浅井工場(長浜市)で、IBMコンピューターの組立から始めました。長浜の浅井でスーパーコンピュータが作られていたんですよ。
現在は、京セラさんの通信インフラ用の部品を担当したり、彦根市にあるSCREENさんの半導体洗浄機の組み立てを行なったりしています。他にも、社名は出せませんが、様々な企業の電子機器の一貫生産や電子部品の組み立て、製造を担当しています。

求む、組織のキーマンになる新卒
記者:新卒採用は、何人ほど採用されているのでしょうか?
岡田総務課長:毎年3人前後で採用計画を立てています。
ですが絶対に計画の人数通りに採用しているわけではなく、0人の時もありました。あくまでも「採用、就職は始まりに過ぎない。定着しなければ意味がない」というスタンスです。逆に入社して活躍が期待できる方が多ければ4名でも5名でも採用しています。
社風、価値観に合わない部分があれば、無理に入社いただいてもどこかで矛盾が出ます。当社は言ってしまえば派手さがない会社。自社ブランドがなくBtoBの極限なので、本当にコツコツものづくりを実直にやってきました。なので、仕事に対して非常に実直誠実で真面目な社員さんが多いです。そういったところに合わなければ、働いていく場として定着は難しいかもしれません。
また当社は少量多品種の商品が多いため、たくさんの社員さんがそれぞれ細かな作業をしています。たくさんの人がいるということは、その人たちをまとめる仕事が重要です。新卒採用では、そういった役割を将来担う組織のキーマンになる方に来て欲しいし出会いたい。
もちろん技術・学識がある方は強みであり大変ありがたく大歓迎ですが、それだけでは厳しいです。一つの方針や目標に向けて、みんなを巻き込みながら活動できる素質が必要だと思います。
記者:本当に優秀な学生さんを探し求めていらっしゃるんですね。
岡田総務課長:そうですね。総合職で入る方には「10年、20年、30年後を見据えて」将来幹部になって欲しいと思っています。
電子機器や半導体関係のエレクトロニクスの大メーカーの主役は、10〜20年単位で変わっていく部分があります。そのような環境ですから当社の主たるお客様も変わっていくことがあります。
そのような状況なので、管理者役の技術系総合職の社員はやることが多岐にわたります。就活中の学生さんからすると、どんな役割なのかが不明確と思えるかもしれません。
しかし就職時の職種が、10〜20年後にまだあるのか、わかりません。就活で職種を絞る必要性はあまりない、ということをわかって欲しいなと思っています。「自分の可能性を限定する必要はありません。」
さらに言えば、当社の主力事業が10〜20年後も同じ位置付けにあることも、ほぼないでしょう。ですから一番大事なのは、必要とされる場所で適応できるかどうか、です。
説明会などで伝えるお話があります。
例えば社員が300人いたら、あなたはそのうちの1人で、1/300。社員が5000人いるうちの1人と比べたら、どちらの割合が大きいですか? と。最初から大きな期待感、役割がある方がいいなら、当社や中小企業が選択肢に入るのではないか、と言っています。
製造ライン規模は西日本トップクラス。高密度実装が売り

記者:技術力に関して、アピールポイントを教えてください。
岡田総務課長:本社の工場では、試作の段階の部品の実装のやり直し「リワーク」という仕事をメーカーさんから依頼されることがあります。これはかなり細かい部品を半分手作業で組み直すという、難易度が高い作業になります。
また製造ラインの規模は、中堅・中小企業の中で比べれば、西日本トップクラスと言えます。
設備も積極的に更新しています。現在の電子部品の主流になっている細かいパーツは、0.2ミリ×0.4ミリの大きさ。これからはさらに一回り小さいものになっていきます。当社ではこういったパーツも扱える設備をしっかり用意しています。


当社の売りの一つが、「高密度実装」ができる設備。スマートフォンなどあらゆる電子機器の小型化・高性能化は、「どれだけ部品を高密度で配置・実装できるか」という実装の能力UPに比例します。そのような高密度の実装に対応する設備と体制を揃えています。
有給休暇取得8割、子育て中のスタッフにも働きやすさ

記者:有給休暇取得が8割ほど、平均勤続年数20年超と、働きやすさがデータから感じられますね。
岡田総務課長:社員さんに女性が多く、パート社員さんで子育て中の方も一定数います。昔から女性が多い会社なので、管理者側も子育て中の方の事情がわかっています。保育園や学校のイベントなど、どうぞ有給休暇を使ってください、と言っています。おおよそ7〜8割ほどの取得率になっています。「残業することが困難な社員の中にはより効率よく仕事ができるようになった方も見受けられます。」


平均勤続年数については、当社は基本的に辞める人がいないんです。さらに昔は高卒で入っている方が多いので、18歳から定年まで勤めます。さらに労働組合もあります。そういったことから長く働いてくれている方が多いのだと思います。
浅井工場は増設予定。これからの主力事業で活躍できる人材に期待

記者:最後に、今後の展望を教えてください。
岡田総務課長:コロナ禍後のビジネスの回復では、「V字回復」ではなく「K字回復」ということばがあるのはご存知ですか。V字のように回復するか、そのまま回復せずに落ちてしまうか、もしくは「I字」のように直角に近い形で回復していくか。
当社も一時期、新型コロナウイルスの影響で仕事が減り、苦労していました。ですが現在は浅井工場で担当しているお仕事がかなり調子が良く、「I字」に近い状態です。管理者、リーダー、製造社員すべてで、人手が足りていません。
工場の面積も足りないため、浅井工場の敷地の拡大、増設の計画が進んでいます。
もう一つ、かつてはソーラーパネル事業が主力だったのですが、時代の変化で国内の製造は整理されました。今は、これからの核になる新規事業への取り組みが大きなテーマになっています。全社一丸になって情報収集しながら話し合っています。

遠い将来のワボウ電子の主力事業が何であるか、正直今はわかりません。ですが、事業が何であれ、今後入社いただく方には、そこで活躍できる力をつけていって欲しい。
そのためにも、まずは任された仕事を一生懸命頑張れる人、「待ち」ではなく何が自分に足りないかを自ら考えながら新しいことをやっていきたい人に、ぜひ入社していただきたいです。
湖北エリアで独自の就活イベント計画中
時代の先端を見極め、新しい事業に常に挑戦し続けてきたワボウ電子。
幹部候補である新卒採用の方へ求めるレベルは高いものですが、岡田さんのお話からは力強くサポートしてくれる会社の雰囲気を感じました。
ワボウ電子など湖北エリアの複数の製造業の採用担当者を中心に、新卒学生向けイベントを企画しているそうです。これまでに参加した学生のみなさんには好評だったそう。2021年中にはポータルサイトも立ち上げ予定。ぜひチェックしてみてください。